みなさま
お世話になっております。M&A365代表の森永でございます。
9月にも多くのM&Aが発表されました。
この中で弊社が注目したM&A事例をご紹介いたします。
東部ネットワーク社、都心湾岸の老舗整備会社・福興商会を14.3億円で子会社化
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120260928541428.pdf
飲料・セメント・産業用ガス輸送を手掛ける東部ネットワーク社(東証スタンダード9036)が、江東区東雲に大型車対応の指定工場を構える福興商会を14.3億円で子会社化。
福興商会社は売上高4.2億円、営業利益45百万円。
福興商会社とは
1950年設立、70年以上の歴史を持つ自動車整備会社です。東京港に近い東雲に整備工場を構え、指定自動車整備事業の指定(民間車検場)を受け、大型トラックを中心とした車検整備に対応しております。乗用車向けには「車検のコバック江東店」として年間2,000台超を扱う地域の顔も持っております。
2025年12月期は総資産8.9億円に対し純資産8.4億円と、自己資本比率95%の実質無借金企業です。
運送会社が整備工場を買う理由
2024年問題以降、運送会社にとって車両の稼働率は収益を左右する最重要指標です。整備士不足で外部工場の入庫待ちが長期化する中、自社グループに大型車の指定工場を持つことは、コスト削減以上に「輸送能力の確保」を意味します。横浜・鶴見の自社工場に加え東京港側に拠点を得ることで、首都圏湾岸の両端に整備拠点が揃います。
加えて、整備業の営業利益率は10〜15%と運送業(2〜3%)の数倍。PBR0.3倍・ROE1.5%の同社にとって、使われていない資本を利益率の高い事業へ振り向ける一手でもあります。
「分割してから買う」スキーム
本件は、福興商会が整備事業以外を新設分割で切り出したうえで、整備事業が残った法人の株式を100%取得する設計です。
指定工場の指定や認証は法人格に付いており、事業譲渡や分割で整備事業を別会社に移すと取り直しが必要になり得ます。だからこそ「残す側」を買う。許認可事業のM&Aにおける定石です。
売手にとっても、蓄積した純資産(約4.5億円)を分割で手元に残し、買手が価値を認める整備事業だけを売る合理的な設計となっております。
純資産の3.6倍という価額
分割後の純資産3.9億円に対し取得価額14.3億円。営業利益45百万円の収益力では説明がつかず、1950年設立の会社が持つ東雲の工場用地の含み益と、都心部で大型車の指定工場を持つ希少性が価格の主因と推定されます。取得原価の配分でのれんがどの程度残るかは、2027年3月期第3四半期決算での開示が注目点です。
以上です。今月もよろしくお願い申し上げます。