〈結論〉
- 全社の利益の最大化を図るには、局所の利益だけを見るのではなく、どの組み合わせがをすればいいのかを考える。
- マーケティング・ミックスという考え方が有効。
〈内容〉
ある製造業のお客様と打ち合わせをしていたときのお話です。
月次の試算表を見ていたところ、原価率の上昇、利益率の低下のに気が付きました。
確かに、原料値上げの要請に応じてはいたけれど、こんなにも上がるのか、なにか他に原因があるのではないか、とその場で社内の方を交えて緊急の打ち合わせを行いました。
大量の資料や情報を通じて、以下の情報を確認しました。
- リードタイム、発注点、適正在庫
- 製造方法
- 廃棄、ロス
- 会計処理(原材料、仕掛品、製品、月末月初が土日にかかる場合の処理)
- 製品別、取引先別の売上高、利益率
- 製品別の原価率
発注ルールや在庫管理方法、製造方法は特に変化がないものの、緩んでいる可能性もあるので、改めて基本の徹底を現場に促しました。
廃棄やロスも、帳簿以上のものは見つかりませんでしたが、改めて管理を徹底しました。
会計処理ですが、手計算での検算を行いましたが、間違っている様子はありません。
やはり、原価率の上昇が影響あるのではと思い、製品別の原価率や、売れている製品の傾向を調べてみました。
どうやら、売れ筋の製品が、より原価率が高い製品にシフトしていることと、製品全体の原価率が上がっていることが大きな原因のようでした。
これは営業戦略も含めて、今後のあり方を考えなければなりません。
どの業界でも原料、資材、賃料などが上がっている状況にありますが、どの製品をどれだけ売れば利益が最大化するか?という考え方は、マーケティング・ミックスと呼ばれます。
例えば、製品A、製品B、製品Cを同じ製造ラインで製造すると仮定します。
それぞれの1個あたりの販売価格と原価が以下の場合、どの製品をどれだけ売れば利益が最大化になるでしょうか?
製品A | 製品B | 製品C | |
---|---|---|---|
販売価格 | 4,000 | 5,000 | 2,000 |
原価 | 1,000 | 3,000 | 1,000 |
粗利 | 3,000 | 2,000 | 1,000 |
一見、粗利が一番高い製品Aをたくさん作れば儲かりそうな気がしますが、はたしてそうでしょうか?
ここで重要なのが、制約条件です。例えば、機械の稼働時間に以下の制約条件があったとしたら、どうでしょうか。
製品A | 製品B | 製品C | |
---|---|---|---|
販売価格 | 4,000 | 5,000 | 2,000 |
原価 | 1,000 | 3,000 | 1,000 |
粗利 | 3,000 | 2,000 | 1,000 |
機械稼働時間 | 5時間 | 2時間 | 0.5時間 |
時間あたりの粗利 | 600 | 1,000 | 2,000 |
この条件ですと、製品Cが時間あたりの粗利が一番高いことがわかります。
このように制約条件を加えてみると、どの製品が一番利益に貢献しているのかがわかります。
制約条件は、時間、工数、個別固定費などが代表的です。
いくつかの制約条件を試してみるのがいいでしょう。
ここまでは分析のお話で、ここからが実質的なスタートです。
このように状況がクリアになると、製造計画、営業戦略に修正を加える必要が生じてきます。
製造では、それぞれの(特に今回は製品A)稼働時間を減らすことに取り組み、
営業では、より時間あたり粗利が高い製品を売り込むことが全社の利益の最大化に繋がります。
経営者は、このような部門間の連携役として、全体統括の司令塔役として、横串を刺していきましょう。
時には外部のリソースを使うのもありだと思います。